足立としゆき夢だより【第156号】をお届けします

皆さん、こんにちは。
足立としゆきです。

新型コロナウイルスの感染が続いています。私は、お盆休み中も「STAY TOKYO」で、災害の被災地調査以外、遠出を控えるよう心がけておりました。皆さんは、いかがお過ごしでしょうか?

8月17日(月)、内閣府が本年4~6月期のGDP(国内総生産)の速報値を公表しました。4~6月期の実質GDPは、対前期比-7.8%、年率換算で-27.8%となり、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、大きな落ち込みを記録しています。
この値は、リーマン・ショック後の平成21年の1~3月期の年率-17.8%をも上回り、戦後最大の落ち込みとなっており、景気後退の深刻さが改めて示されたものと考えられます。
なお、このような状況下で、民間住宅投資が年率換算-0.8%、企業の設備投資が年率換算-5.8%となっている一方、公的需要のうち公的固定資本形成(いわゆる社会資本投資)はプラスの値を示し、年率換算で+4.7%増となっています。このことから、社会資本整備が景気の後退を軽減する方向で下支えしていたことが明らかで、今後の景気対策として公共投資の必要性が明らかになったものと考えています。

ところで、前回の夢だより(第155号)で、激甚な水害に見舞われた熊本県南部の球磨川において、これまで記録したことのない甚大な浸水被害を発生したことを受けて、人吉市など球磨川沿いの街の再生と合わせて、現在中止されている川辺川ダムを含めて抜本的な治水対策を進めるよう赤羽一嘉国土交通大臣に要請したことを紹介いたしました。
その点について、少し詳しくご説明したいと思います。

熊本県南部の球磨川では、戦後最大であった昭和40年7月豪雨を大きく上回る大雨により、中流部の人吉盆地やその下流の球磨村、芦北町、八代市坂本地区などの球磨川沿川地域が、これまで記録したことのない高い水位を記録し、大きな被害に見舞われました。

私は、平成18年9月から国土交通省水管理・国土保全局の河川計画課長として、川辺川ダムを前提とした球磨川の河川整備基本方針の策定を担当しました。
当時の治水対策の基本的な考え方ですが、球磨川と支川の川辺川の合流点に人吉盆地があり、洪水が非常に集まりやすい構造となっており、さらにその下流部は渓谷で狭窄部のため水が下流に流れにくく、人吉盆地は浸水被害が非常に発生しやすい地形条件にあると考えていました。このため、球磨川本川に市房ダムという県で管理しているダムがありますが、規模が小さくて洪水調節効果が小さいため、球磨川本川と同じぐらいの流域面積を有する支川の川辺川に8,400万㎥の洪水調節容量を有する川辺川ダムを計画し、洪水を防御することとしていました。なお、川辺川ダムの洪水調節容量の8,400万㎥は、八ッ場ダムの約1.3倍あります。

しかし、その後、川辺川ダムの下流の人吉市やダムサイトの相良村などがダムへの反対を表明し、それを受けて平成20年9月に現在の蒲島熊本県知事が、計画を白紙撤回し、ダムによらない治水対策を追求すると発言されて検討に入りました。さらに、平成21年9月の政権交代を受けて、前原誠司元国土交通大臣が「ダム本体工事は中止、生活関連対策は継続」との方針を発表されました。

なお、同じ時期に前原元国土交通大臣が中止を表明された八ツ場ダムについては、流域の都県知事の反対を受け再度検証を行うこととなり、その結果、民主党政権下の前田武志元大臣の下で事業継続が打ち出され、再度の政権交代後にダムの本体工事に着手して、去年の10月に完成し、台風19号で利根川流域が洪水に見舞われた際に大きな効果を発揮しました。そのことは皆さんも御記憶にあろうかと思います。

一方の球磨川につきましては、ダムによらない治水を検討する場で議論を積み重ねてきましたが、結論を得るには至らず、現在も継続して協議が進められている状況であります。

こうした状況を踏まえ、今回の豪雨により人吉市やその下流の球磨村、芦北町、八代市坂本地区などが想像を絶するような激甚な被害を受けているのを見ると、大量の洪水を貯留することができる川辺川ダムがあれば、浸水被害の軽減効果はとても大きかったのではないかと考えます。

もちろん、川辺川ダムだけで全てがうまくいくとは思いません。例えば既存の市房ダムの洪水調節容量を拡大するダム再生を行い有効活用する方法や、そのほかの様々なハード対策と組み合わせて実施することで抜本的な治水対策が実現されることになると考えています。被災した人吉市や球磨川沿川の市町村の街並みの再生や、予報・避難などのソフト対策の徹底と併せて、迅速にご検討いただくようお願いしたいと思っています。

なお、7月19、20日に岸田文雄自民党政調会長に同行して、また、7月31日に世耕弘成参議院自民党幹事長に同行して、人吉市や球磨川沿川の被災現場に伺いましたが、その際、人吉市、球磨村、芦北町、八代市など球磨川沿川の市町村長さんから、沿川のまちづくりと併せて抜本的な治水対策を進めてほしいという、強い要請を頂きました。

ぜひとも、国土交通省と県、そして流域の市町村がしっかり連携し、未来に向けて禍根を残さないためにも、川辺川ダムの建設を含めた抜本的な治水対策を進めていただくようにお願いしたいと思います。

なお、今回も山形県や大分県など豪雨災害の被災地の現地調査に行ってきましたので、ご報告をさせていただきます。

【山形県被災地調査】

7月27~29日にかけて梅雨前線に伴う豪雨災害で被災した山形県の最上川沿川地域を、8月5日(水)、視察しました。山形県建設業協会の奈良崎事務局長にご同行いただきました。

まず、白鷹町の国道348号の道路崩落箇所に伺いました。山形県置賜総合支庁建設部の竹川補佐にご案内いただきました。
盛土により造成された道路自体が崩落しており、全面通行止めとなっていました。盛土部の崩落の復旧については工夫が必要そうでした。
続いて、大江町の左沢地区に伺いました。最上川沿いに無堤部があり床上浸水に見舞われていました。また、その直上流の橋梁には、上流のダムから流れてきたという大きな台船が引っかかっており、驚きました。

次に、今回の出水時に大きな効果を発揮した直轄ダムの寒河江ダムに伺いました。最上川ダム統合管理事務所の加藤所長にご案内をいただきました。建設業協会の西村山支部の國井支部長にもご同行いただきました。
寒河江ダムは平成3年のダム完成以来最大の流入量毎秒1,283㎥を記録しましたが、最大毎秒261㎥しか放流せず、下流の寒河江市西根地点の水位を1.6m低下させる大きな効果を発揮したとのことです。また、最上川上流の直轄の白川ダム、長井ダムも同様に大きな効果を発揮していましたが、いずれのダムも効果を発揮するとなかなか注目していただけないというジレンマがあるようでした。

その後、県管理の白水川の堤防決壊箇所を視察したあと、同じく県管理河川の大旦川の排水機場に伺い、床上浸水が60戸に及んだ周辺の浸水被害の状況について、村山市の志布市長、大山議長、県の村山総合支庁建設部の菅野次長からお話を伺いました。建設業協会村山支部の大山支部長や幹部の皆さんにもご同行いただきました。
現在、県が排水機場の周辺に調整池を整備中ですが、その整備を前倒して実施するよう県にはお願いしました。また、長期的には調整池の拡張も考えているとのことでしたので、それについても急ぐようお願いしました。

村山市に続いて、大石田町の最上川大橋とその前後の特殊堤の区間に伺いました。
最上川大橋はトラス構造の歴史的な橋梁ですが、最上川の洪水が橋面に乗り、流木やゴミが大量に溜まったと聞きました。
現地では、村岡町長から説明をいただきましたが、とにかく洪水時の水位を下げたいとのことで、そのために河床掘削が必要と要請を受けました。
続いて、その下流部の無堤部に町長に案内いただきましたが、堤防のない箇所から溢れて浸水被害を生じているため、堤防の早期整備をお願いされました。

次に、大蔵村塩地区の河岸決壊箇所に伺いました。大蔵村の安彦副村長、県の最上総合支庁建設部の高橋道路管理主幹にお話しを伺いました。建設業協会最上支部の金田支部長や幹部の皆さんにも同行いただきました。
肘折温泉から流れてくる銅山川の勢いで河岸と道路が激しく洗掘され、民家に川の流れが迫っていました。機械力を駆使して復旧するしかないと考えられました。

続いて、浸水被害を生じた清水地区に伺いました。最上川の本川堤防に低い部分があり、早期かさ上げを要望されました。上下流のバランスをとりながら、どのようなタイミングでかさ上げすれば良いのか、なかなか難しい問題だと思いました。
なお、その地区で床上浸水の被害を受けた家屋を見させていただきました。地元の建設会社の方のご自宅で、その場で再建するのか、移転して新築するのか悩んでおられました。

その後、建設業協会新庄支部に伺い、協会の柿崎副会長から今回の豪雨災害への対応状況についてお話を伺いました。

【大分県被災地調査】

7月7日(火)前後の梅雨前線による豪雨の際に、洪水調節で大きな効果を発揮した松原・下筌両ダムを視察するため、8月11日(火)、大分県に伺いました。
九州地方整備局筑後川河川事務所の松木所長、副所長で九州北部豪雨復興センターの柳田センター長、九州北部豪雨復興出張所の川合地域防災調整官、整備局OBで筑後川に精通している後藤さんにご案内をいただきました。

最初に、平成29年の九州北部豪雨で激甚な土砂災害が発生し、筑後川河川事務所が権限代行で復旧・復興を行っている筑後川支川の赤谷川の現場に伺いました。
支川の崩谷川(くえんたにがわ)では、土砂流出を抑制するため、砂防ダムの整備が進んでいました。
また、平成29年の被災当時訪れた際には土砂洪水氾濫で埋塞していた下流部の河道についても見させていただきましたが、土砂掘削により河道の復元が進んでいました。

次に、日田市市街地の上流にある松原・下筌両ダムを訪れ、筑後川ダム統合管理事務所の中村所長から洪水調節の状況について説明をいただきました。日田市の原田市長、大分県建設業協会日田支部の河津支部長や幹部の皆さんにも合流いただきました。

今回の豪雨により、上流側の下筌ダムが満杯になり異常洪水時防災操作(いわゆる但し書き操作)に移行しましたが、下流側の松原ダムがそれをしっかり受け止めて、日田市で1.2mの水位低下効果を発揮したとのことでした。日田市はこれによりかろうじて大きな被害を生ずることなく乗り切ることができたと、原田市長も大いに喜んでおられました。
なお、松原ダムは高さ82mの重力式コンクリートダムで、下筌ダムは高さ98mのアーチダムです。両ダムは昭和48年に完成していますが、昭和33年から13年間にわたり「蜂の巣城紛争」という反対運動が展開されたことで有名です。

続いて、下筌ダム貯水池左岸側の大規模な土砂崩れの現場に伺いました。道路が通行止めになっただけでなく、福祉施設や家屋が崩落した土砂の直撃を受けて大きな被害を生じていました。また、建設業関係者のご自宅も被災していましたが、幸い皆さん避難されていて無事だったとのことでした。

その後、松原ダムの上流側の被災地である杖立温泉に伺いました。先日伺ったひとつ山向こうの天ヶ瀬温泉同様、一階は浸水により大きな被害を受けていました。新型コロナウイルスの影響でダメージを受けている温泉街をどう再生させていくのか、大きな課題だと感じました。

さて、その他最近の動向は次のとおりです。

【国会の動き】

国会は閉会中であり、特段の動きはありませんでした。

【自民党の動き】

8月4日(火)、林芳正参議院議員、盛山正仁衆議院議員とともに、首都直下地震への対応に関する勉強会を開催し、内閣府の防災担当、消防庁、気象庁、国土交通省の水管理・国土保全局、航空局等の担当者にもご参加いただき、発災後の情報収集のあり方などについて意見交換をさせていただきました。

その他、新型コロナウイルス関連肺炎対策本部などの会合に出席するとともに、参議院自民党の執行部会、副幹事長会議に出席しました。

【事務局からのお知らせ】

足立としゆきの公式HPを更新しました。
URL https://www.adachi-toshiyuki.jp/

盛りだくさんの写真を中心に、国会質問等の動画も交えて活動を紹介しています。また、Face Bookのページもリンクを張って見ることができるようになりました。国会の議事録や講演資料、被災地視察などのレポートもダウンロードできるようになりました。
ぜひ、一度ご覧ください。

なお、周りにまだHPを見たことのない方や足立としゆきを後援する会「建設ゆめクラブ」の会員に未登録の方がおられましたら、ぜひお声掛けをいただき、ご紹介いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。